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一級建築士事務所 Eee works

Column コラム

『住まいを考える』シリーズ健康な暮らしと住環境家づくりのはじめに自然環境・災害

2026-03-14

3・11という原点  Column413

3・11という原点

理にかなった性能の先に、情緒がある

■あの日のラジオから始まった問い

2011年3月11日。

この日は私にとって現在の断熱・耐震・耐久性を

住まいづくりの基本性能として考える原点となった日です。

あの日私は滋賀県での打ち合わせを終え、玄関先で挨拶をしていました。

滋賀県でもはっきりとわかる揺れを感じましたが、

『大きな地震だな、、』

という程度の感覚でした。

しかし帰阪する車中で、ラジオを聴いているうちに、次第に空気が変わっていきました。

通常のラジオ放送が特別番組に次々と緊急特番に切り変わり

アナウンサーの声から『ただ事ではない』緊迫感が伝わってきました。

それが、当日夕方頃の記憶です。

やがて、その被災状況が毎日毎夜ラジオから流れてくるにつれ、当時設計していた

住まいの『耐震性・断熱性』に付いて見直すことに繋がりました。

 

■粉雪舞う映像で突きつけられた『性能』の重さ

発災当時の3月、東北地方は粉雪が舞っていました。

電源が絶たれた無断熱の住宅、避難場所の公民館ではとても無暖房では過ごせず、

耐えるしかない状況が広がっていました。

『電気が絶たれたとしても、最低限の室温を保てる躯体性能』

『家族を守るために決して倒壊しない躯体性能』

これらは、デザインや使い勝手よりも先。全てに優先されるべき

『最低限の性能』であることを 強く思い知らされました。

 

■意匠と性能の間での葛藤

そこからしばらくの間、さまざまな紆余曲折がありました。

それまで取り組んできた

『意匠(デザイン)』に対して、性能を天秤にかけ

性能面を優先させた時期もありました。

住まいとしては、性能を重視することは決して悪くはありません。

しかしそれまで大切にしてきた

意匠性を『不純なもの』と捉えてしまう様な

なんとも割り切れない思いを抱えていたことも事実です。

『暖かければ、住まいは完成か?』

『強くあれば、住まいは完成か?』

自問自答を繰り返した末に 2週間お話ししたテーマに辿り着きました。

 

理にかなった性能と情緒のある暮らし

 

耐震・断熱気密・耐久性は比べるものでも競うものでもなく

住まいにおける前提条件である。

その『土台(手段)』があるからこそ、

初めて『情緒(目的)』を積み上げることができる。

今はそう確信しています。

 

■2つの震災で変化した設計スタンス

振り返れば、私の設計者としてのスタンスは、2つの大きな地震により方向付けられました。

1つ目は、建築実務を始める直前に起こった

阪神淡路大震災

発災後の復旧現場で、建築の脆さを実感した経験。

2つ目が、独立直後に発生した

東日本大震災

設計者として『本当にお渡しすべき住まいとは何か』を問い直した経験。

実務と並行して、全国の勉強会や講演を聞きに廻り、事務所で勉強会を行いコツコツ知見を積み重ねてきました。

その時にいろいろと教えていただいた方々とは、

今でも大切なパートナーとして知見の共有や確認をさせていただいています。

 

■欲求の土台の上に『情緒』がある

心理学に、『マズローの欲求5段階説』という指標があります。

人間の欲求は、まず『生理的欲求・安全の欲求』という根源的な部分が満たされて初めて

その上の

『社会的欲求』や『自己実現(情緒的な豊かさ)』へ向かうとされています。

住まいづくりの性能を満たすことは、まさにこの

『根元の土台』を固めることです。

命と健康が守られているという安心感があって初めて、夕景を美しいと感じ、

家族との何気ない時間に情緒を見出すことができるのだと思います。

 

 

性能は手段であり

ゴールは豊かな暮らし。

 

この順番を間違えることなく、これからも一つひとつの住まいに向き合っていく。

3月11日はその思いを新たにする日です。

 

 

 

 

 

 

 

長文お付き合いありがとうございました。

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