住まいづくりはもっと自由に、もっと楽しみながら出来ると私たちは考えています。快適でたのしみのある住まい作りのお手伝い。これが私たち Eee worksの仕事です。
一級建築士事務所 Eee works
『住まいを考える』シリーズ健康な暮らしと住環境家づくりのはじめに植栽・外構計画
性能競争のインフレと現場のコストバランス

省エネ基準の義務化以降 『数値基準』の扱いが大きく分かれてきていると感じます。
基準クリアをゴールと捉えるか、あるいは健康・安心のための確かな土台と捉えるか。
その視座の違いが、住まいの完成形を大きく左右します。
Ua値や断熱等級の数字ばかりが独り歩きする風潮の中、実務者としてこの数値とどう向き合うべきか。
性能向上に伴う、建築コストの上昇と、住まい手が真に享受できる暮らしの豊かさは、
どの地点で調和するのか。
Eee worksが考える、『手段としての性能』という視点から考察してみたいと思います。
■数字を追うごとに膨らむ建築コストの現実

Eee works では新築・改修を問わず、全棟で温熱計算・燃費計算を実施しています。
Ua値・冷暖房負荷・1次エネルギ消費量の目安を毎回シミュレーションしていると、
ある『温熱性能の勘所』が見えてきます。
費用対効果が最も高く、暮らしの中で恩恵を最大限に実感できるバランスゾーン。
それは、断熱等級6(HEAT20G2)を下限とし、G2からG3の間に位置する領域だと考えています。
外皮性能を高めることで、生涯の冷暖房費は抑えられますが、実はその効果は設計仕様だけでなく、敷地の周辺環境(日射条件)に大きく左右されます。
■『G2・G3』の先にある費用対効果の見極め

断熱等級6(HEAT20G2)を下限と定めていても、むやみに性能を追うことはしていません。
『冷暖房負荷』は、建物の仕様だけでどこまでも下がり続けるわけではないからです。
断熱材やサッシのグレードを上げても
『冷暖房不可の削減効果』が頭打ちになり、
費用の上昇に対して効果が比例しなくなる境界線が存在します。
そこが、その敷地条件における性能の上限と考えて良いと思います。
数値を更に伸ばすことに特化し、極端に窓を小さくしたり、温熱計算の都合だけで、
建物の向きや窓の設置面を縛ってしまったりする設計手法も見られます。
しかし、敷地条件によっては南を無理に追わず、景観や落ち着きのある『北側』へ
おおらかに開いた方が、暮らしとして遥かに心地よい場合もあります。
敷地の個性を前向きに読み解くことよりも、計算上の数値を優先して窓や配置を決めてしまうと、
本来『ゆたかな暮らしの器』であるべき住まいから方向性がずれてしまうと感じるのです。
■限られた予算を『暮らしの情緒』へ配分する設計

温熱性能や耐震性能は安全で健康的な暮らしを支える不可欠な『手段(土台)』です。
一方で、日々の暮らしの豊かさは、自然との関わり方、庭や街への開き方と閉じ方、
室内空間の心地よい連続性によって決まります。
だからこそ、限られた建築予算は性能だけに偏らせず、情緒を育む部分へも、
適切に配分されるべきです。
例えば、中間領域(半外空間)と繋がるための大きく開放できる窓や、夏の日差しを遮る深い軒下空間はとても気持ちのよい空間です。これは、温熱計算的には、デメリットとなる場合もあります。
しかし、計算された温熱的に守られながら、隣接する半戸外空間の心地よさを味わえること。
この調和こそが、
私たちが目指す『性能の先にある情緒』です。
今回も長文お付き合いありがとうございました。
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