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一級建築士事務所 Eee works

Column コラム

『住まいを考える』シリーズ家づくりのはじめに暮らしを整理する設計植栽・外構計画

2026-10-04

ひとつの軒下が生み出す 街への余白と暮らしの安息 Column442

ひとつの軒下が生み出す

街への余白と暮らしの安息

敷地を訪れたとき、私たちが最初に考えるのは

『間取りと駐車場』ではありません。

この街並みに対してどう建築を構え、どう佇むべきか。街の風景にうつしく馴染む佇まいはどうあるべきか。という問いです。

宝塚の計画において、その問に対するひとつの答えとなったのが、道路に面して大きく張り出した屋根、そしてその下に生まれた『大きな軒下空間』でした。

その軒下を、敷地の奥に位置する中間領域へとまっすぐ伸ばしていくこと。

このひとつの大きな屋根がつくる軒下空間が、道路側と奥の中間領域という2つの場所で、それぞれ異なる効果を生み出しました。

 

■塀の高さに頼らず 街に『余白』を差し出す

外部からの視線を遮り、住まいの安心感を確保する方法のひとつとして、塀は今も有効な選択肢です。

かつて私たちも、塀を高く立ち上げることで住まい手の安息感をつくる方法を試みていた時期がありましたし、

敷地条件によっては、現在も有効な一手だと考えています。

しかし、さまざまな手法を模索する中で、設計の視座も少しづつ深化してきました。

ひとつの高い塀で囲い込むのではなく、

低い塀、植栽、ルーバーなどを、組み合わせること。

物理的な遮蔽だけでなく、

視覚的な遮蔽や意識のグラデーションを何層か重ねる

(レイヤード)することで、街との間にやわらかな距離感をつくっていく試みです。

宝塚の家ではそこからさらに一歩進め、敷地境界から建物をセットバックさせ、

道路側へ大きく屋根を張り出し、深い軒下空間を作る手法をとりました。

境界線上の構造物で街を遮断するのではなく、深い軒下がつくる『心地よい陰影』を街並みに差し出すような感覚です。

街を行き交う人がふとしたゆとりを感じられるような余白をつくることが、

この建築の街に対する『最初の挨拶』でした。

 

■陰影がもたらす『アプローチの品格』

この深い軒下空間は、道路から玄関へ至るアプローチの佇まいにも、静かな品格をもたらしています。

都市部の住宅計画において、最も繊細な配慮が求められるのが、『公と私の距離感』です。

引きの取れない敷地では、扉を開けた瞬間に通りの気配と室内の暮らしが直結して

しまい、住まい手にとって落ち着かない空間になってしまうことがあります。

宝塚の家でも玄関は道路から見える位置にありますが、閉鎖的な塀で囲うことはしていません。

道路へと伸びた深い庇が落とす落ち着いた陰影が、道路と玄関の間に自然な

『心理的な結界』を作り出しています。

物理的な塀に頼らなくても、深い影というクッションを介することで、住まいの入り口に

確かな落ち着きと品格を作り出すことが狙いでした。

 

■中間領域がもたらず、リビング・ダイニングの伸びやかさ

道路に対して端正に構え、アプローチを落ち着かせた屋根は、

敷地の奥に位置するリビング・ダイニングにも伸びやかな居場所をつくっています。

奥へと伸びた屋根によって、隣地からの視線がゆるやかに遮られた軒下空間。

そこから庭の樹木へと視線が伸び、美しくトリミングされた景色だけが室内に広がるような効果が生まれています。

街に対してあえて『余白』を差し出すこと。

ひとつの屋根が生み出した『引き』と『構え』の設計こそが、結果として建築としての佇まいの品格と、住まい手に寄り添う伸びやかな半外空間の豊かさを両立させていれば、

設計者として、本望です。

 

 

 

 

今回も長文お付き合いありがとうございました。

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