住まいづくりはもっと自由に、もっと楽しみながら出来ると私たちは考えています。快適でたのしみのある住まい作りのお手伝い。これが私たち Eee worksの仕事です。
一級建築士事務所 Eee works
『住まいを考える』シリーズ健康な暮らしと住環境家づくりのはじめに自然環境・災害
能登半島の視察を終えて
昨年2024年1月1日発災の能登半島地震の現状視察に同行させていただきました。
この能登半島地震ならびに、能登半島豪雨によりお亡くなりになられた方々
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
今、能登半島の珠洲市、輪島市門前町エリアの視察を終え帰阪の電車の中です。
M’s構造設計 佐藤塾長、堤さんありがとうございました。
視察を終えた直後の素直な感想は
『簡単に答えなど思い浮かばない』
という軽々に処理しきれない気持ちです。
あまりに被災エリアが広範囲でかつ被害が大きく、また発災後1年3ヶ月経過していること
そもそも人口密度が低いエリアであることなど、
理由は様々あると思われますが、人影はほぼありませんでした。
更地になっている箇所と倒壊家屋が残る敷地が6:4くらいの割合かと思います。
更地が余計に手付かずの倒壊家屋、被害の少ない家屋を目立たせている状況でした。
当日は朝早くにもかかわらず気温は20℃程、海は穏やかな波で太陽光で波がキラキラと
光り海鳥が鳴く、絵に描いたような穏やかな海岸線です。
しかしそこには人工音がなく、波と海鳥の声だけが響き穏やかな情景に対し
反対側の更地とポツンと残された倒壊家屋やガタガタに崩れたり、隆起したり、
仮補修した道路がなんとも言えず、あまりにも優しい表情の自然とは対照的な風景が
広がっていました。
私は建築実務者として建築を創ることを生業とし、構造や温熱性能を必須条件と考え
少しでも美しく暮らしやすく街並みに呼応する住まいを創りたいと考え活動しています。
そこには少しの自負もあったかもしれません。
その自負がこの光景を見て処理しきれないなんとも言いようのない気持ちになりました。
これが素直な感想です。
この状況を目の前にして、どうすれば良いのか、どうしたらこのような状況をこの先
防ぐことができるのか、次々と浮かぶ解決策めいたものはどれも軽々に感じられます。
その理由は、合理性よりも精神論を時に重視してしまう
日本人独特のメンタリティーに共感するからだと思います。
最初の視察地は珠洲市周辺の海岸エリアです
グーグルストリートビューで発災前の街並みを確認することができます。
海岸線に並行に走る道路の陸側には民家が立ち並び、海側には船小屋でしょうか
こちらも建物が建ち並んでいます。
今ここからの景色は、そのほぼ全てがなくなり目線の先には『見附島』が見えています。
この見附島も地震により島の形が大きく変わったそうです。
今現地からは、小高い丘のように見えている『見附島』ですが、元は舟形の形だったらしく
その船首に当たる部分が、すっぽりなくなってしまったそうです。
確かにストリートビューでは、船首らしき部分が確認できます。
それが、地震により崩れ落ちてしまったということです。
このエリアは、地震の後津波もあったエリアです。
津波の高さは1m程度だったとのことですが、
倒壊家屋が、津波により陸地側に押し出された様子がわかります。
車庫だったらしい建物の、土台のみが残っていますが、アンカーボルト、柱の仕口が
陸地側に曲がり、ちぎれています。その残った突起の部分に漁の網が絡まっていました。
津波により、倒壊家屋、海の備品などが一緒に押し流された様子がよくわかります。
普段ボッキリと折れることなど想像もしていない電柱も3つに分断されていました。
水は数十センチでも歩行が困難になると言われますが、1m程度の津波がこれほどの
威力があるということが、この状況から理解できます。
陸側の建物の多くが倒壊しているなか、より海側にあるにも関わらず倒壊せずかつ津波被害も
受けていない建物がありました。
その住まいの前には発災後生活再建をしようとされたのか簡易の浄化槽が設置されていましたが
現在は 気配はありませんでした。
街全体に倒壊家屋が散在し電線は途切れ埋設した上下水道も隆起している状況で、
この先このエリアで生活再建は難しそうだということが想像できました。
建物を建てる際に私たちは様々な試験を行います。建物単体の耐震性を上げることを
必須と感じています。しかし、地域を見る。端的にいうとハザードマップを見るということが
どれほど大切なのかということがよくわかります。
珠洲市から移動します。
珠洲市から輪島市への移動は、山道を抜ける26号線を通りました。
このエリアは、同年9月の能登半島豪雨よると思われる土砂崩れの被害が
多く見られました。山肌の地滑り被害により道路が埋まったり、道路ごと崩落している
被害が多くみられますが、そのほどんどが杉が植林されたエリアで人工林の杉ごと
地盤が滑り落ちています。
人工林の杉は、植林の作業特性から根が浅くかつ根を広く張らない特徴があるようです。
登山途中でも倒れた杉を見ることがありますが、ほぼ根は下に伸びておらず表層付近に
モップを押し付けた様な根っこがある そんな特徴があります。
また、地滑りした山に残った杉は下枝が残っていることから、長い期間手付かずであることが
わかります。
国策として植林が進みましたが、若者の第一次産業離れ、安い外材への転換などにより
放置された山は 日本全国にあります。
豪雨災害の地滑り映像でよく人工林が地滑りしている状況を見ますが、
このような可能性のある場所は、全国に散在しているのだと思います。
我々が、地元の杉・檜を使って建築を行うことで、地元の製材・林業が活性化される
そんな当たり前の地元で材料が循環するということにもっと注力することで
健全な人工林が残っていくのだと思います。
輪島市の門前町付近の海岸隆起エリアに到着です
広範囲に海面隆起のあったエリアです。これも想像と全く違っていました。
想像では、海底がところどころ液状化のように部分的にボコボコと隆起しているエリアが
広範囲にあると思っていました。
しかし、現状は海が干上がったような状態になっています。
エリアの地盤自体がそのまま隆起したそうで、既築のテトラポットが地震により崩れず
組み上がったまま、その下の地盤ごと持ち上がったそんな状況です。
それが、見える限り一面続いていて、隆起の終わりの部分が確認できないほど一面が
そっくりそのまま下駄を履かせたように持ち上がっているそんな現象です。
調査では、その隆起は最大4mと言われており、その隆起が2024年16時10分の
地震と同時に起こったということになります。
地球は、大きなプレートの上に乗っていて日本はそのプレート4つの上に乗っかっています。
そのプレートの歪みと揺れが地震の発生源であり、今回のような地盤の盛り上がりの原因ですが、
それは、何万年もの歳月をかけて徐々に動くものだと思っていましたが、
今回のように一度の地震で一気に起こる事もある!ということを初めて知りました。
今現在、東京沿岸から宮崎県沖までを一帯の震源地とする
『南海トラフ地震』が
30年以内に起こる可能性が非常に高まっていると言われています。
私たちが生きている間に起こる可能性が非常に高まっている訳ですが、
それは、地球のサイクルからすれば、ほんの一瞬です。
またそのエリアも地球規模からすれば針の先ほどのエリアです。
しかし、私たちが建てる住まいは、住まい手にとっては唯一無二のものであり
また、そこに住まう方々も唯一無二の命です。
そのような一翼を担う実務者として、今回の視察はとても有意義なものでした。
このような地球規模の災害に対しては本当に無力だと見せつけられましたが、
この地震から学び、備えることは可能です。
すでに発表されている各市町村備え付けの
ハザードマップを閲覧し
地盤調査を行い
建物単体の耐震性を高める。
そして万が一寒い時期に被災しインフラが絶たれたとしても
一定期間耐えられるだけの断熱性能を有しておく。
これは実務者であれば、誰しも可能であり、この重要性を住まい手にお知らせすることも
可能です。
そのような小さなことから積み上げていくことで、このような自然災害により
被災される方が一人でも少なくなるように願うとともに、
決意を新たにした視察となりました。
改めて、この度お亡くなりになられた方々、被災された方々に心よりお見舞い申し上げると
共に、早期の日々の暮らしの再建を心よりお祈り申し上げます。
長文お付き合いありがとうございました。
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